数式処理は,数理科学・自然科学・工学の境界にある学際的な分野であり,様々な分野の研究者・人材が参画しています.したがって,興味の対象や研究手法も多様です.
理論分科会では,とくに理論的な観点から数式処理の研究を行っています.具体的には,
数式処理の応用は広く,数学における計算から,最適化や制御工学など応用的分野における諸現象の数理的解明まで,多くの研究者に利用されています.また研究者自身がソフトウェアを作成することも稀ではありません.数式処理における理論研究の重要性は,数理的考察においては言うまでもありませんが,エンドユーザが利用しているソフトウェアを開発する場合においても大切なことです.これはソフトウェアの実行効率が研究速度の向上に資することからも明らかなことでしょう.
われわれはそのような視点から,数式処理における理論的,基礎的研究を進めています.研究会においては,会員以外の発表も可能です.みなさまの参加を期待しております.
代表的なキーワード: 代数的算法,厳密算法,数値記号算法,グレブナー基底,限量子消去
現在,数式処理システムは,種々の問題を解決に導く道具として,多くの場面で使用されてきています.数式処理システムの発展は,コンピュータハードウェアの飛躍的な進歩のみでなく,効率的なアルゴリズムの開発に加え,技巧的な実装がなされているからに他なりません.システム面でみると,データ構造,コンピュータに適した実装方法,ユーザインタフェースなどの開発が対象となりますが,数式処理システムを用いた応用も対象となります.また,アルゴリズム開発においても,その検証のために行われる実装もまた対象です.数式処理システムのみにとどまらず,広くコンピュータ上で動作する数学ソフトウェアも対象とします.
システム分科会は他の分科会とも密接に関連しています.理論においては,開発したアルゴリズムを検証するためには実装が不可欠でありますし,教育においては,ユーザインタフェースであったり,教育目的に即したシステム開発が重要であるでしょう.そのため,研究会を他の分科会と連携した合同研究会として開催する場合もあります.
教育分科会は,数式処理の教育への応用に関する研究に携わる会員間での交流を促進し,その研究に関する議論を深め,以って,数式処理の研究を促進し普及を図る活動を行っています。現在の活動は,年2回程度の研究会の開催です.当分科会には,数式処理と教育という二分野の学際的な領域であることから,実に様々な研究テーマが存在していますが,主なものをいくつか紹介します.
数学分野のオンライン学習(e-Learning)では,数式の提示,回答の入力,正誤判定などの操作が必要となります.数式は自然言語と異なる体系であり,その処理には特別な仕組みが必要です.既存の数式処理ツールの活用による方法や新たな手法の開発など,数式を扱うという観点からの研究が行われています.
数式処理ツールを用いることで,演習問題や模範解答の自動生成を行うことや,動的な操作(マウス/タッチ操作やキーボード入力など)に応じたグラフ描画や式変形を伴う教材作成が可能となります.初等から高等教育まで,そして様々な分野における学習理論を踏まえ,多面的な研究が進められています.
中等数学教育で扱われる問題解法は,数式処理の理論に基づく解法とは大きく異なっています.この違いを理解し認識することは,問題の数学的背景を深く知る手助けとなるとともに,人間には容易いものの,計算機には難しい問題を把握することにつながり,数式処理の理論の更なる研究へと誘います.
以上を含め,様々な形での数式処理の教育への応用に興味関心がある方々の教育分科会開催の研究会へのご参加をお待ちしています.
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